介護予防の基礎用語~骨折の種類
~ それぞれの用語の簡単な説明 ~
転倒骨折
足腰の筋力低下や脳血管障害などで歩行に支障をきたし、その結果転倒し骨折してしまうことです。
なかでも骨折することによるQOLの低下や、転倒することへの恐怖から外出を控えるようになり、
その結果筋力低下が加速され、生活機能障害を招くことも問題視されております。
うつ・閉じこもり
なんとなく気分が晴れず、何を見ても楽しい気持ちがしない、暗い心理状態に支配されます。
日常生活には興味や関心が失われ、何をする元気も意欲もでない、食欲が減退し、疲れやすい、よく眠れない、等の身体的訴えを伴うことも多くなります。
将来に何も希望もないという悲観的、自責的な思考から、極端な場合、自殺念慮、自殺企図に至ります。
閉じこもりとは「日常生活における活動範囲が屋内にほぼ限られている状態」ですが、身体的不自由から来る要因と精神的な要因があります。
認知症
抽象思考の障害、判断の障害、失行、失認、失語、実行機能障害などの認知機能障害は本質的な症状です。
妄想、幻覚、不安、焦燥、せん妄、睡眠障害、多弁、多動、依存、異食、過食、徘徊、不潔、暴力、暴言などは必ずしも認知障害といえない行動的なものを周辺症状と呼びます。
原因としてはアルツハイマー病、脳血管障害、脳への外傷性疾患が挙げられます。
低栄養
現在の日本の平均寿命の伸び率の要因は、適度な食の欧米化によるものです。
油脂類と動物性タンパク質を摂取すると生活機能の障害リスクは低下します。
トレーニングよりまずは栄養から。からだの栄養状態を良好に維持すれば、加齢に伴う最大歩行速度の低下を最小限に抑えることができます。
口腔機能低下
食べる機能を中心とした摂食、咀嚼、嚥下機能はそれぞれ独立しているのではなく、相互に連動し一連の運動として無意識のうちに行われています。
固い物が噛めないと柔らかいものばかり食べるようになり、口腔機能が低下します。
その悪循環が続くと食欲が低下し低栄養状態につながりやすくなります。
尿失禁
高齢者への身体的(医療措置)・心理的(罪悪感・羞恥心)・社会的(行動制限・経済的負担)側面へさまざまな影響を及ぼし、QOL(生活の質。充実した生活と考えても良いかと思います)の低下だけでなく、ゆくゆくは寝たきりにつながることも指摘されております。
自分でできる尿失禁予防(握力・片足立ち・歩行速度低下予防・骨盤底筋の強化)をすることで活動的な生活を維持しましょう。
夜間頻尿
夜間にトイレに行く頻度が高くなる夜間頻尿も問題です。夜間頻尿とは、一日生活して下半身に貯まった水分が横になってから心臓に戻りやすくなり、夜間に尿となって排出されやすくなることです。70~80代の八割は該当するそうです。
夜間に尿が出やすくなり、夜周りが暗い中で歩行することでつまづき転倒⇒骨折ということにもなりかねません。
就寝四時間前にお風呂に入ると、血行改善のため寝る前に尿が出やすくなります。排尿機能を若返らせ、夜間頻尿の改善効果が期待できます。
椎骨圧迫骨折(ついこつあっぱくこっせつ)
人間の骨の中には折れやすいところがあって、例えば背骨はしりもちをついた衝撃等で上下からの力に押されて椎骨がつぶれやすくなります。
単なる骨折だけでは保存療法(コルセットで固定など)ですが、右上の図のように腹側の椎体がつぶれると、上体が前傾(猫背の状態)します。
一つの椎体骨折で上体が約10°前傾するといわれております。
ということは椎体が二つつぶれると20°、三つつぶれると30°前傾するということです。
さらに前傾姿勢になることで、別の問題も発生します。
背中が曲がると肺がきゅうくつになって換気量(息を吸ったり吐いたりする量)が減り胃を圧迫され
逆流性食道炎を引き起こすことがあります。また食道裂孔ヘルニアの関連も注目されております。
食道裂孔ヘルニアは自覚症状はありませんが、前かがみになると胸やけや息苦しさがあります。時に胸が痛くて心臓内科に受診される人もおります。
大腿骨頚部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)
転倒により大転子(気をつけの姿勢で手首があたるところ)をぶつけてしまい、
その外力が大腿骨頚部(大腿骨の中でもっとも弱い部分)に伝わって骨折をしてしまいます。
もしそうなったらすぐに病院へ行ってください。数の赤い〇で囲った部分です。
骨が折れるのも確かに問題ですが、
それによって入院したり、寝たきりになったりして全身の機能が低下してしまうほうがもっと問題です。
一週間寝たきりになると認知症になる確率が急上昇します。
コーレス骨折
日本語では橈骨(とうこつ)下端骨折といいます。手首の部分です。
転倒しそうになって地面に手をついた時に、自分の体重と地面からの突き上げ力によって橈骨の最も折れやすい下端部に外力が加わり折れてしまうものです。
健常者で全治五週間かかり、その間はギプス固定となります。
利き手だった場合、特にギプス生活中は生活動作が落ちます。入浴や着替えなどもギプスによってやりづらくなります。
骨折をしてしまいますと、
骨折する→長期入院→身体機能低下
の流れが加速してしまいます。
一方、骨折しなくても転ぶことへの恐怖感から、すこしずつ活動範囲が狭くなって行く恐れもあります(転倒後症候群)。
転倒の要因には、病気や薬の副作用、加齢変化、環境などがありますが、ここでは加齢変化についてお話をいたします。
筋力が低下することで、健康な人と比べて4倍以上も転倒のリスクが上がります。
骨密度について
一般的に骨粗しょう症の人(日本に1300万人いるといわれております)は、骨密度が低いケースが多いです。ですが、骨密度が高くても骨折しやすい人もおります。
それは「骨質」(こつしつ)です。糖尿病などの生活習慣病があると骨が過剰な糖の影響を受け、弾力性を失い、骨がもろくなるとされております。
骨は、一年間で全体の10%が新しく作り替わります。糖尿病の人は血糖値の管理をしっかり行えば骨質は少しずつ改善されます。
生活習慣病の人は、骨粗しょう症の治療のほか生活習慣の改善も必要です。魚や野菜などを幅広く食べ、しっかり体をうごかしましょう。
骨粗しょう症予防には、歩くことや少しジャンプする運動がよろしいかと思います。踵を1~2センチ上げる程度でも構いません。それから毎日5~10分、体の一部でも太陽にあてるようにしましょう。
ちなみに厚労省が定めた一日に必要なカルシウム量は約700㎎。牛乳なら3.5カップ。豆腐なら6丁分に相当します。カルシウムの吸収を良くするビタミンDも含めてできるだけ摂取しましょう。
ロコモティブシンドローム
ロコモティブシンドロームとは実は、日本全国で40歳以上の、4700万人が推定対象者の病気なのです(東大病院調べ 2011年10月)。
約3人に1人が発症する可能性があるということです。
ロコモティブとは「運動の」という意味で、ロコモティブシンドロームとは、
運動器の障害による要介護の状態や、要介護リスクの高い状態を示しています。
つまり、足・腰・膝の骨、関節、筋力とバランス能力の衰えが歩行困難をもたらす運動器症候群のことです。病名ではありません。
結果的に介護が必要になったり、寝たきりになったりする危険性が高い状態です。
この症状は、介護予防項目に非常に関係のあるものです。
以下にチェック項目を設けましたので、一つでも当てはまるようでしたらお医者さんにご相談下さい。
☑片足立ちで靴下が履けない
☑ 家の中でつまづいたり、滑ったりす
☑ 階段を上るのに手すりが必要である
☑ 横断歩道を青信号で渡りきれない
☑ 15分くらい続けて歩けない
☑ 2kg程度(1ℓの牛乳二本程度)の買い物をして持ち帰るのが困難
☑ 家の中のやや重い仕事(掃除機・布団の上げ下ろし)が困難
「運動する時間がない」「どのくらい運動したら良いかわからない」
といった理由で半数の人が半年以内に止めてしまいます。せっかくの運動がもったいないです。
最低三ヶ月続けばその後も続きやすくなるでしょう。
簡単だと感じたらレベルアップ(例 スクワット⇒太極拳)!
疲れているときは軽めの運動にするなど、続けることが肝心です。
長く続けるためには自分にご褒美をあげるなど、毎回の記録をつけましょう。感想をつけると効果的です。
トレーニングは、10回行うと「ややきつい」と感じる程度の運動を週2~3回行えば良いです。筋肉痛のある時は控えましょう。
今後きたえる必要のある重要な筋肉は
- お尻からふくらはぎ(立つ、座る、歩く)
- 太ももの前面(歩行の安定)
- お尻の両脇(バランス)
- 背筋(猫背予防)
です。運動前後に血圧を測ることをおすすめします。
※運動することで、脂肪細胞から「アディポネクチン」というホルモンが分泌され、
糖尿病や心臓病、がんやアルツハイマーに発症しにくくなると考えられております。
近年アディポネクチンの研究が進んでおり、食事制限や運動できない方への治療に役立つことが期待されております。