介護予防~運動編~
今回は、実際どういった運動が良いのかを解説いたします。
椅子を使って転倒予防体操
※ご注意 転ばないためには筋力を強化すればいいのですが、
運動途中で痛くなったりした場合は、無理に続けないでください。
そして事前と事後の全身の柔軟体操を行ってください。
①すり足改善運動(つまづき防止のために)
椅子に腰掛けて両足を揃えます。
かかとを軸につま先を上げたあと、下ろします。
次に、つま先を軸にかかとを上げたあと、下ろします。
片足だけで足踏みをするのも効果的です。
②腰痛・腹筋
椅子に腰掛けて、背中を背もたれから離します。
両足を軽く上げてから、胸のほうへ引き寄せた後
緩める動作を三回行って足を下ろします。
③骨盤周辺と脚の筋肉を使い、バランス運動
イスの後ろ側に立っていただいて、背もたれを持ってください。
両足をついたまま、ゆっくり右足に重心を移してください。
できましたらその後はゆっくり左足。
簡単にできる方は右足に重心を移すときに左足を上げてみましょう。
反対側も同様に。それも簡単な方は、手を離して立った状態で行ってみましょう。
④前後のバランス運動
背もたれをつかんで、イスに当たらないように右足を一歩前に、
左足の踵を浮かさないで右足に重心を乗せてみましょう。
⑤足を上げやすくする運動
立っている状態で、太ももを胸につけるつもりで右足を上げてみましょう。
ふらつく方は壁を使ったり、イスに座ってください。右が上がったら左足。
⑥爪先立ち
爪先が上がらなくて数センチの段差でつまずいてしまう方も多いです。
起立した状態で、できる限り高く踵を上げてください。慣れないうちは壁や椅子に手をかけてください。
腰が曲がっていると効果が薄れますので、体がまっすぐに伸びているか意識して行いましょう。
猫背体操
人間の背骨は以下のようなかたちをしています。
頚椎、胸椎、腰椎合計で24個の骨が連結して背骨があり、
よく見るとまっすぐつながっておらず湾曲(カーブ)しております。
頚椎は前湾(前方に膨らむ)、胸部は後湾(後方に膨らむ)、腰椎が前湾しており、
「S」の字を描いているのがおわかりでしょうか。
背骨は自然なカーブを描くことで上半身の重みやバランス、力の配分を調整しております。
一部ですが、猫背の原因を以下に記載します。
- 姿勢の悪化(パソコン、テレビゲーム等)
- 運動不足
- ライフスタイルの変化
- 骨の病気(骨粗しょう症)による変形
- ストレートネック(頚椎の湾曲が少ない方)
- 日本人の体形的な要因
- 内科的疾患
人間は立った姿勢を維持するだけで筋肉が働いております。
背筋の力が弱くなる、もしくはそうなる姿勢を長い間続けていると
段々頭が前に傾きます。
人間の頭はボウリングの玉くらい(約6 kg)重いものです。
そのままだと目線が下に行くのであごを前に出して目線を調節します。
首を傾けた状態を支えるだけで約三倍の力(18kg!)が必要といわれております。
その姿勢に慣れてしまうと、いわゆる「猫背」ができあがります。
そして、猫背がもたらす症状として
- 呼吸量の低下
- 血流の低下
- 頭痛、肩こり、腰痛
- 見た目のかっこ悪さ
などがあります。いずれもいいことではありませんね。
では、対策としてどういったことがいいでしょうか??
一番自然な方法として、ご自身の筋力をアップすることがあります。
背筋と腹筋の強化です。
猫背予防だけでなく、結果的に肩こりや腰痛予防にも
役立つのでお勧めの方法の一つです。
肩こり体操(肩甲骨・・・下の画像で赤く囲った骨の運動)
背筋を鍛える方法の一つとして、肩甲骨の運動があります。
「肩こり」というのは自覚症状であって病名ではありません。
何かの原因があり、その結果肩がこるという症状が出ます。
何が原因かは人によって違いますが、
例えば
- パソコン作業ばかりして同じ姿勢が続き、首の動きが悪くなった
- 寝違えた
- 肩を冷やしてしまった
- 同じ方の手で重いものを持ち続けていた
- その他頚椎の病気や内科的疾患
など、いろいろ考えられます。
すべての人に共通して効果のある体操というわけではありませんが、
筋肉がこり固まって辛い方には体操の効果は期待できます。
以下、簡単にご説明いたします。
肩甲骨(けんこうこつ)という骨が皆様の背中側にありますが、
肩甲骨は多くの筋肉に支えられているにも関わらず、
あまり大きな動きを行わないと思われております。
ですが、肩関節を動かす際に
肩甲上腕リズムといい、腕を真横にどんどん上げていくと、
腕が30度上がるたびに肩甲骨は15度下の部分が回転します。
肩甲骨はいろいろな筋肉のネットワークによって運動しているのです。
ただ、この肩甲骨の動きが悪いと周囲の筋肉が硬くなってしまい
肩こりの症状につながりやすいです。
今回は肩甲骨の動きを意識して体操してみましょう。
両肩をすくめる動作をしてみましょう。これは肩甲骨が上下運動を行います。
肩甲骨を動かすことで、結果肩甲骨にくっついている周りの筋肉も
間接的に動かされます。肩甲骨を意識して行ってみてください。
腹筋運動
腹筋を鍛えるといっても、学生の部活動のような激しい運動は必要ありません。
数をこなすのではなく、ゆっくり時間をかけて
丁寧に運動することが実は効果的なのです。
呼吸も重要です、力を入れるときに息を吐く。
抜くときに息を吸うことを基本としてみましょう。
※少しでも痛みを感じる場合、無理に続けずに中止してください。
■腹筋を鍛える運動その1
1.足を肩幅に広げて立つ。
2.胸の前に両手で大きなボールを抱えるイメージで楕円を作る。
3.息を吸い、吐きながら右に体を回す。
4.3の姿勢のまま、再度息を吐きながら更に深く回す。
※手のひらと胸の位置がズレないように注意する。
5.息を吸いながら元の姿勢に戻す。
6.同様に左方向も行う。
- 腹筋を鍛える運動その2
以下はNHKの「ためしてガッテン」で実際にやっていた動作手順を
参照したものです。
まずは普通の腹筋運動と同様、仰向けになって寝そべり、膝は立てておきます。
そして、手のひらを太ももの正面部分にピタっと乗せましょう。
あとは両手の中指が膝の位置に来る位まで上体を持ち上げ、
また元に戻すという、通常の筋トレでよく見られる動作を繰り返していくわけですが、
その時にゆっくりとした動作を忘れないように意識し、
一連の動作に4~5秒の時間をかけていくようにしましょう。
おへそのあたりに手を置いて、のぞき込む運動でも良いです↓
1日10回×2セットを目標とするよう推奨しています。
下肢の運動~インターバル速歩~
信州大学スポーツ医科学講座の能勢教授は「インターバル速歩をすることによって
大幅な体力向上、血圧、血糖値、BMIの低下がみられます」と述べております。
インターバル速歩とは・・・
三分早歩き(7割程度の力)+三分ゆっくり歩き を一日五回行う
というものです。他に歩くことによって、
- 転倒・骨折予防(転倒が防止できれば骨折の予防にもなります)
- 認知症予防(運動自体が予防)
という効果も期待されます。
腰痛予防
今回は腰痛の原因のひとつとして注目されている「腸腰筋(ちょうようきん)」についてお話いたします。
大腰筋、腸腰筋とは、漢字の通り腰椎から骨盤を通って大腿骨につく筋肉です。
一般に筋肉というと力こぶの筋肉を連想されますが、腸腰筋は体表から触ることのできない中の筋肉(インナーマッスル)です。
下の図のなかの腰椎から骨盤の前を通って太ももの骨につく筋肉を腸腰筋と呼びます。
←(腸腰筋イメージ図)
腸腰筋の役割は、足を持ち上げたり骨盤の位置を正常に保ちます。
歩行する際には骨盤が中心となり前後左右のバランスを無意識に取っているので、
骨盤がぐらぐらすると歩行時のバランスがくずれて転倒の原因にもなります。
最近の傾向として、デスクワークやテレビの前で過ごすことが多くなり
腸腰筋が短縮されている時間が増えているように思われます。
腸腰筋の短縮・筋力低下が起こると
・足が上がりにくくなる
・骨盤が前に傾き、上半身が反り返る。その結果お腹がせりだす。
股関節が後方に押しやられて膝と足首を制御する筋肉に圧力がかかる。
→下半身の痛みの原因になる
・前かがみの姿勢は見た目にもよろしくない
など、体にとって良くないことが起こりますので、
腸腰筋を鍛えることが大事です。足を上げることでこの筋肉は使われますから、
大股で歩くこともいいと思います。
「筋肉を鍛える」といってもイメージがわかないと思いますので、
「筋力低下予防」のつもりで取り組まれてはいかがでしょうか?
腰痛予防(腸腰筋)運動
①もも上げ
立った姿勢で、膝を床と平行になるまで上げ下げします。20回くらいから行います。
身体がふらつく方は壁やイスにつかまりながら行います。1日2セット。
②足の踏み出し
直立の姿勢から片脚を上げ、大きく前方にバンッと踏み出します。
体重をのせて、出した脚のひざが90度になるまで曲げ、
3~5秒間後ろ足を意識的に伸ばしてください。
1セット10回(左右5回ずつ)1日2セットが目安です。
かかとは浮いてもかまいません。
③イスを使ってのストレッチ
イスに座った状態で、両腕を前に出して両肘を曲げます。
左ひざを上げてから、左に上体をねじって右ひじと合わせます。
10回ずつから始めてみてください。
④ お尻のブリッジ
猫背のように腰椎がわん曲してしまうことも腰痛の要因です。
この体操ではあおむけの状態で、ひざを曲げます。
背中を床につけたまま、お尻と腰を持ち上げて腰椎のそりを減らします(5秒間×3回)。
また、腰痛予防として中腰の姿勢はやめましょう。床にあるものを拾うとき等、
必ず膝を曲げるようにしてください。腹筋を意識して動かすと腰痛も軽減します。
急な腰痛には骨盤バンドもおススメ
あまりにも腰痛がひどい方には骨盤バンドもおススメです。
骨盤を固定して腰にかかる負担を軽減する効果があります。
↑こちらは当院で使用している骨盤バンドです。
取付部分がマジックテープになっており、強力に
骨盤をサポートできます。骨盤が安定すると腰痛が軽減します。
骨盤を固定するように巻いてください。
おなかにかかると効果が減ります。
取り付け方↓